急須胴体の形になった生地は、ロクロの上で仕上げられ手口をつけて、焼成へと進みます。この工程まで来ると、みなさんがイメージされる急須の形がほぼできあがります。
急須の裏底に造り手の証を刻印
ほとんどの常滑焼急須には造り手(製造者)の刻印がされており、場所としては急須の持ち手の下か裏底が多いと思います。
宇幸窯では急須の胴体が柔らかい時に裏底に「宇幸」の刻印をします。
最近では農作物などに生産者の表示がされているのをよく見かけますが、常滑焼急須には以前から造り手(製造者)の刻印がされています。どちらも、生産者(製造者)を明確にして、消費者に安心して買い求めていただけるようにとの願いからだと思います。
デパートやホームセンターなどで急須を見かけたら、刻印を探してみてください。もし急須に刻印が無かったら…安心して使うことができますか?
店長の
こぼれ話
常滑焼産地は地域団体商標「常滑焼」の商標を取得して、認定された製造者に地域団体商標の個別番号が付与されています。個別番号は「とこなめ焼協同組合の組合員名簿」から検索することができます。
宇幸窯の組合員名は(有)水本陶苑。地域団体商標使用登録番号は(08-1007)です。
急須胴体のロクロ仕上げ
ロクロと聞くと、粘土を回転させながら成形する様子を思い浮かべるのではないでしょうか?
もちろん手引き成形ではそうなのですが、宇幸窯では泥漿鋳込み成形で生地を成形するので、成形工程ではロクロは使用しません。泥漿鋳込み成形の生地の表面はそのままでは石膏型の表面の凹凸が残っているので、ロクロで回転させながら、カンナやへらを使って急須表面を滑らかに仕上げます。
急須手口取付け
表面の仕上げが終わると、いよいよ急須の手口を取付けます。急須の胴体と手口は乾燥前で適度に柔軟性があるので、このような成形作業が可能になります。
1. コンパス状の道具で急須の胴体に丸い穴をあけます。
※急須の胴体は前工程のロクロ作業で表面を磨いてあります。
2. 急須の口に泥ノタ(生地と同じ液状粘土)を筆で塗ってから、先ほどの胴体の穴に接合します。
3. “とんとん”と軽くたたいて急須の口と胴体をなじませます。
4. 急須の持ち手も同様にして取り付けます。
この後、胴体と手口の接合部をヘラで撫ぜて、密着させるのと同時に見栄えを良くします。
急須生地の乾燥
胴体の仕上げに手口の取り付けと磨きも終わって焼成前の最終工程に向けてじっくりと急須生地を乾燥させます。
手口のような先端部分から先に乾きやすいので、白くなりかけてますね。
じっくり乾燥させないと変形やひび割れを起こすので注意が必要な工程なのです。
この急須の並んでいる缶の蓋を、気温や湿度に応じて開けたり閉めたりしながら、均一に乾燥させます。
店長の
こぼれ話
このように急須の形となった生地は、1週間ほどの時間をかけて乾燥させます。
作業をする時の気候に合わせた気遣いが必要で、湿気が多すぎても、少なすぎても、よい急須に仕上がりません。
この工程でしっかり乾燥できたら、いよいよ焼成となります。