急須の原料となる泥漿[でいしょう]は、粘土に長石・水・珪酸ソーダ等をまぜた液状の粘土で、これに弁柄[べんがら](酸化鉄)が混ざった朱色の原料を常滑焼業界では朱泥ノタ[しゅでいのた]と呼んでいます。以後、泥漿の事を朱泥ノタと呼んで説明します。
常滑焼の主原料となる「土」
高く積まれた、この丸い板状のもの。これが実は土なんです。水に浸して余分な成分を分離させた良質な土だけを、数ヶ月かけて乾燥させます。そしてこの土を長石の粉や幾種類もの原料と水と混ぜ合わせて、ようやく急須の原料になるのです。
まずは大きな粘土を小さく砕きます
これはクラッシャーと言って、大きな粘土を小さく砕く粉砕機械です。
急須や湯呑みの原料を作る製土作業で一番最初の工程に使います。
粘土の板を上から投入すると、クラッシャー内部の羽で砕いて下に落とす構造になっています。
真上から見てみましょう。
乾燥させた粘土をクラッシャーの上から放り込みますと、中では鉄の羽が回転していて、粘土を次々と砕いていきます。
この鉄の羽に手を挟まれたら大変な事になります! 宇幸窯では安全第一で作業をおこなっています。
店長の
こぼれ話
この「クラッシャー」を導入するまでは、ハンマーを使って手作業で砕いていたので、腱鞘炎になったりして大変でした。
ボールミルによる原料調合
ボールミルとは、粘土、長石などの材料を水と一緒に粉砕する装置です。
写真は水本陶苑最大のボールミルで、直径と長さがそれぞれ1.9メートルあります。
鉄の筐体の中には石の壁が張ってあり、材料を砕くために、こぶし大の玉石が約900キログラム入れてあります。そこに先ほどの材料を約2トンと水を約600リットル入れて、約一晩回すと鋳込み製法用の泥漿粘土が出来ます。これを常滑では「ノタ」と呼びます。
このボールミルでは1回に1500リットルのノタができます。
この他にも100キロから500キロのボールミルが8基あり、用途別に使い分けています。
今回製造した鋳込み用粘土には弁柄を混ぜていないので、朱泥色をしていません。
この鋳込み用粘土で成形した急須などを焼成すると、うっすらと黄みを帯びた白色になります。
店長の
こぼれ話
泥漿(ノタ)を粘土からすべて窯元で作る、というのは常滑でもほぼありません。宇幸窯で作るノタは、常滑焼窯元のみなさんの間でも高く評価されており、宇幸窯以外の窯元にも納入しています。